2005年にめちゃくちゃ売れた本です。今更ながら読みました。以下、ポイント。
感情の問題
- 『大日本帝国が天皇の神社、靖国を特権化し、その祭祀によって軍人軍属の戦死者「英霊」として顕彰し続けたのはそれによって遺族の不満をなだめ、その不満の矛先が国家へ向かうことのないようにすると同時に、何よりも軍人軍属の戦死者に最高の栄誉を付与することによって、「君国のために死すること」を願って彼らに続く兵士たちを調達するためであった。』
- 『多くの日本人が戦争と国家への懐疑煩悶に陥ることができなかった』
- 『戦争のおぞましいもの、悲惨なもの、腐ったものすべてが一切拭い去られ、土着的な「懐かしさ」を伴った独特の「崇高」のイメージが作り出されているのである。』
宗教の問題
- 『靖国信仰を「宗教」から区別し、すべての日本人が尊重すべき「道」だとする思想は、靖国神社が法制度上単なる一宗教法人となった戦後も、靖国神社はもとより政府においても消え去っていない。』
国立追悼施設の問題
- 決定的なことは施設そのものではなく施設を利用する政治である。
- (追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会の報告書に対する考察)『「戦後」については、そしてとりわけ今後将来においては、自衛隊の戦闘行為はつねに、日本や国際社会の平和を脅かす不正な敵への正しい武力行為となり、この活動で命を落とした日本側の支社だけが追悼対象となるという点で、明らかに「靖国の理論」が復活している。』
- 『日本の「A級戦犯」についても個々の判決の妥当をめぐっての議論はありうるとしても、国民を戦争に動員し、アジア諸国の人々に甚大な被害をもたらした責任が不問に付されてならなかったことは明らかだ。』
- 『東京裁判の重大な問題性は、そこで裁かれたものよりも、むしろそこで裁かれなかったものの方にある。』