- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/02/28
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村上春樹の長編を読むのは初めて(翻訳、短編、エッセイはありましたが)。
不思議な世界でした(若干ダークですが)。
現状から逃げ出したい家出少年と、ナカタ老人とホシノくんの珍道中が交互に進んでいきます。
田村少年のどこかわからないが遠くへ行きたいといった気持ちは15歳の時思ってたかな〜とか考えたりもしましたが、最後彼が『逃げまわっていても、どこにも行けない。』と気づき、現実と向かい合おうと決めたのは個人的によかったと思います。
あと、物語の舞台が高松ですが、少年がうどんを食べるシーンはちょっとくすっとしました。筆者がエッセイで香川のうどん巡りをしたエピソードを思い出したので。
あと、ベートーヴェンといったクラシックからレディオヘッドまでいろいろなジャンルの音楽が所々に出てくるのはいいですね。
それ以外のお気に入りの文章。
- 『世の中のほとんどの人は自由なんて求めていないんだ。求めていると思い込んでいるだけだ。すべては幻想だ。もしほんとうんい自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ、覚えておくといい。人々はじっさいには不自由が好きなんだ。』
- 『僕が求めている強さというのは、勝ったり負けたりする強さじゃないんです。外からの力をはねつけるための壁がほしいわけでもない。僕がほしいのは外からやってくる力を受けて、それに耐えるための強さです。不公平さや不運や悲しみや誤解や無理解−そういうものごちに静かにたえていくための強さです。』
- 『たとえ字が読めなくたって、おじさんにはおじさんにしかできないことがある。そっちの方を見なくちゃいけない。』
- 『ベートーヴェンってのは、もともと協調性というものはほとんどなくて、自分のことしか考えていない。自分のこと、自分の音楽のことしか頭にない。そのためには何を犠牲にしたってかまわないと思っている。』
- 『戦いを終わらせるための戦いといいうようなものはどこにもないんだよ。戦いは、戦いの中で成長していく。』
- 『思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。でもそれと同時にあなたの身体を内側から激しく切り裂いていきます。』
- 『これから何かちょっとしたことがあるたびに、ナカタさんならこういうときにどう言うだろう、ナカタさんならこういうときにどうするだろうって、俺はいちいち考えるんじゃねえかってさ。・・・で、そういうのはけっこう大きなことだと思うんだ。つまりある意味ではナカタさんの一部は、俺っちの中でこれからも生きつづけるってことだからね。』