昨今の経済情勢と派遣切りについて思うこと

そもそもそんな大層なことをいえる立場でも何でもないですが、昨年後半から経済情勢が悪化しているので最近は経済をテーマにしたテレビ番組なりネットの記事なりを普段より意識的に見聞するようになったのですが、それらの情報を通じて考えたことを書いてみました。ただし、私は専門家ではないですし、メディアの情報を鵜呑みにしているだけの側面もあるので間違いもちらほらあるかと思いますが。


特に今いわゆる「派遣切り」が進んでいますが(正社員切りにシフトするのも時間の問題でしょうが)、その背景には「金融資本主義」があると思いました。
金融商品が規制緩和されることによって株主がデイトレーダに広がったわけですが、彼らに株を買ってもらうためには短期的に利益を出し続けることが重要になり、それに合わせて会社の投資計画が5〜10年といった中長期的なものから、短期的なものにシフトしたそうです。その結果短期的にみればマイナスとなるような長期的な計画に投資しづらくなったため製造業の力が弱くなったという分析には納得しました。以前の日本型経営は労働力を大事にしていましたが、効率化のために福利厚生をなくしていき、社員や中小企業の請負を減らして、派遣や海外の請け負いにシフトしていったと思います。(中小企業に関しては経営者からテレビで、バブル以前は大企業の請負で、バブル崩壊以降大企業の受注が減って、ニッチな産業で生き残る道を模索している、という話を聞いて本当に大変なのだなあと認識を改めました。)今の金融資本主義で一番理不尽に感じることはリストラをして会社をスリムにしたほうが株価が上がるということです。
問題は企業だけでなく、政府(小泉政権以降)も積極的に米英主導の金融資本主義を導入したため後戻りできなったことがあります。資本家が強すぎる金融資本主義でも、資本家を否定する共産主義でもなく、資本家と労働者が互いに必要とするような方向に向かえばいいと思っています。


金融資本主義は導入当社からカラクリがわからない自分でもなんかおかしいとは感じてはいたのですが、今や多くのエコノミストがおかしいと言っています。もちろん金融資本主義にかわるアイデアはすぐ出てこないでしょうけど、ニュースを見るとどの企業も今の金融体制を前提にして企業を如何にしてスリム化するのかということに注力しているように見えます。今回の不況は生半可な不況ではないのですから、会社を存続させるためには役員、社員の報酬を削った上で、それでもどうしようもなくなったときに解雇という手段をとるべきだと思います。


そもそも金融資本主義は石油ショック以降成熟し、成長に限界が見え始めた先進国の企業が更に成長するために考えられた仕組みだと思うのですが、経済発展至上主義の観点で考えれば今後発展しそうなBRICs諸国と如何にリンクして投資、発展していくかということになるのでしょうか?
今後日本の製造業は、薄利多売の体力勝負ではなく、付加価値で勝負するようなニッチな産業で生き残るという方向に進むのではないかと思っています。「クリーンエネルギーの開発が重要だ」とおっしゃるエコノミストが多いですが、BRICs諸国よりも日本にの方に技術の歩がある分野で政府が後押しするのも一つの策なのかなと思いますが、それだけでは今まで通りの競争力を確保するのはきついかなとも思います。


それから「派遣切り」に関しては踏み込んで考察しているメディア(特にテレビ)は少ないと思いました。その点元旦に放送された朝生は見てよかったと思います(それでもいつも以上に議論が白熱して空回りなことも多かったですけど)。翌日のニュースで大村厚生労働副大臣が湯浅誠派遣村村長の要請を受け入れて、厚生労働省の講堂を宿泊用に解放した映像を見た時は番組がきっかけで政府を動かしたのかとしみじみ思いました。


派遣切りについて、本人の努力が足りないとかいう側面はないとは言いませんが、産業構造の変わり目におきた構造的な問題だと思います。もし彼らが働き手を必要とするような高度経済成長時代にいたら一生懸命働いていたと思いますし、派遣の規制緩和をする時点でセーフティネットが充実されていなかったことが一番の問題です。派遣というのは特に失業の危機に曝されているので収入は少ない代わりに失業保険等のセーフティ−ネットを手厚くすべきだと思います。そのためならば税金を多少多く払っても構わないと思っています。税金というのは所得の再分配機能があるわけですから、一人でも多くの人が健やかに生きるためならば払っていいと思います。そもそも人々が税金を払うのをためらう最大の理由は使い道が不透明なことだと思います。よくわからないような箱ものや使い道の乏しい道路なんかに無駄使いしていないのかなど行政を信用していないのが問題としてあると思います。セーフティネットを拡充も大事ですが、財政の透明化にも力を入れてほしいと思います。