山形国際ドキュメンタリー映画祭2009 その2

この日はコンペティション作品を3本観ました。どれもレベルが高く満足でした。

『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠 〜Encirclement』

ネオリベラリズムに対して批判的な見解を持つジャーナリスト(ノーム・チョムスキー等)のインタビューを再構築した作品です。
示唆に富んだ面白い話でした。ただインタビューが2時間半続くので途中睡魔に負けてしまいました…。それから内容については中身が濃すぎて自分で整理し切れないので割愛します。


上映後のQAで監督からおもしろい話を聞くことができました(監督の生の声が聞けるのが映画祭の魅力の1つですね)。
1つ目は去年のリーマンショックネオリベラリズムは否定されてなく、重工業産業の痛みを納税者に押し付けただけに過ぎないということ。個人的にも全くの同意見です。
2つ目は学校や銀行などで合併による資本集中の流れが進んでいて、グローバリズムの動きが未だに活発であること。
基本的にインタビューを何度も見返したかったので、本が出版されたら買うのになあと思いました。

『Z32』

パレスチナ警察官を(軍の作戦で)殺した兵士とその恋人が事件について証言する内容でした。
パレスチナ問題は互いに被害を主張するような報道とかが多いですが、加害者からの視点で見るのがユニークだと思いました。
恋人の主張(何の責任もない普通の警官を殺すことは許せないとか、被害者の家族を考えるとやり切れないとか)はもっともなのですが、軍の命令で人殺しをしてしまった兵士だけを責めることはできないと思います。

既に手を下した兵士は自分の行動を正当化したがっていたも印象的でした。彼の行為は赦しがたいですが、正当化したくなるのも無理がないと思います。1番の問題は政府が普通の人を殺人鬼にしてしまうような戦争を仕掛けることだと思いました。個人に罪とか責任を押し付けていてはいつまで経っても問題が解決しないと思います。

『要塞 〜The Fortress

今回私が観た中で一番面白かった作品です。スイスの難民受け入れ施設を取り上げた作品です。
亡命受け入れ施設を見る機会が普通ないので、彼等の生活は自分にとって新鮮でした。一番印象的だったのは施設を出ることになったアフリカ系の人たちのミサのシーンです。受け入れられなくても彼等が施設の職員に感謝していたのがよかったです。

亡命希望者の話を聞くと(一部嘘をついている人がいるとはいえ)胸が痛くなります。
政治的な背景で亡命した人はどうしようもないとはいえ、経済的な豊かさに憧れて希望する人の流れは(多くが却下されるとはいえ)、アフリカやいわゆる途上国とヨーロッパとの貧富の差が明確に存在している限りは止められないですし、受け入れを拒否する審査官を否定すれば済む話とは思えません。
もっというならば難民問題自体日本人にとっても無関係な問題とは思えませんでした。これからは途上国自身が国民を養えるような社会を作らないと根本的に解決しないでしょうね。