若き友人たちへ―筑紫哲也ラスト・メッセージ (集英社新書 515B)
- 作者: 筑紫哲也
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/10/16
- メディア: 新書
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大学院の講義録をもとに書かれていますが、随所に筑紫さんの考えが垣間みれました。大学生向けの話ですからメッセージ性を感じました。
個人的には写真に関するくだりはなるほどと思いながら読めました(例えば、東京都写真美術館の存続の裏事情とか)。特にコロンビア大学の教授が報道写真について語った言葉が特に印象に残りました。報道写真家を志す方には是非読んでいただきたいなと思いました。
きみは、どちらも選んだとしても、一生その十字架を背負い続けることになる。兵士を助けなかったことで取材はできたかもしれないが、では取材を続けた人間に悔いがないかといえば、自分が一緒に行動していた兵士を見捨てたことで、この兵士は死ぬかもしれない。彼を見捨てたことで、人間としての痛みを背負うことになる。逆に、兵士を助けるというヒューマンな行為は、自分本来の事実を世間に伝えるという仕事、もしかしたら戦争を早くやめさせられたかもしれない使命を放棄したという悔いが残る。どっちを選んだとしても十字架を背負わなきゃならない。そういう職業がジャーナリストだ。
それから国家の危うさについては強いメッセージを感じました。その中の一説を引用します。
ヨーロッパを中心にポストモダンというか、近代は終わったんだという考え方が強まるなかで、 nation state への否定的論調が広がりました。簡単に言えば、カッコいいわけです。しかし問題はそう単純ではなくて、小さな政府、グローバル化が進めば進むほど、それには賛成だと考えている人も含めて、逆説的に安全や安定を求める風潮が強まり、そこで国家というものを頼りにするようになります。これが左右を越えて、国家という生活共同体への依存ということになりやすい。