死因不明社会

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)


小説『チームバチスタの栄光』などの著者である海堂尊さんの書き下ろしの新書です。
日本では解剖が以下のように十分に行われていないがために死因の特定が杜撰だと説いています。

  • 日本の解剖率は約2%
  • 解剖なしの臨床診断の誤診率は12%。
  • 「解剖」に対する費用拠出が行われていない。

医学の進歩のことを考えると残念だと思います。とはいえ解剖は時間がかかったり、遺族の了承が得られにくかったり難しい側面はあると思います。著者はその対策として「Ai」(CTやMRIなどによる死体に関する画像診断)を導入した死亡時画像病理診断の有効性を説いています。
「Ai」のメリットについては引用しませんが、是非導入してほしいなと納得しました。


それから構成がよかったなと思いました。フィクションの人物を使って説明している章と普通のブルーバックスの文体で説明している章が交互にあるので、わかりやすいと思いました。ノンフィクションの人物を使って説明している分、親しみやすかったです。それと同時にフィクションの人物に代弁させている分、筆者が主張したいことをより強く感じました。

『厚労省の皆さんの反論は「お金がありません」。この言葉が意味しているのは、「官僚は重要と考えない」、あるいは「それは天下り組織の礎にはならない」でしょ。』
『仕方がないでしょ。僕たち官僚が問題の重要性を認識するのは、問題がメディアに取り上げられ、不作為による責任を追及されてからだからね。』

『当たり前のことができない医療制度は、どこか間違っている。それは、経済効率優先で医療制度を構築した米国を無批判に後追いしている我が厚労省の愚作が原因なんだけどね。』

だからエーアイって、「医師の本懐」であるはずなんだ。だから義務化したっていい。ただしひとつ条件があって、エーアイ費用の拠出を国が保証すれば、だけどね。