大臣

大臣 増補版 (岩波新書)

大臣 増補版 (岩波新書)


内閣総理大臣になられた菅さんが最近改版した本です。
少し前に買っていて寝かせていたのですが、タイミング的に旬だと思いましたので読みました。
大臣になってからのエピソードが面白かったです。薬害エイズやカイワレ騒動の舞台裏について語れていています。薬害エイズ問題は素人目から見てもおかしなと思うことがちらほらありました。特に酷いなと思ったのは当時の責任者に対しては単に訓告程度の罰則しか与えられなかったことです。その程度では責任をもって仕事をしているのか多いに疑問に思いました。裁判自体も全ての情報が提示されない等以下のように公正でないと指摘されていました。

法の下の平等とは、形式ではなく、実質的に弱い立場の被害者が早急に救済されるものでなくては意味がない。


菅さんはいろいろなエピソードを通して制度の改善すべき点や問題点を挙げていますが、その根底には『大臣は省庁の利益のためではなく、国民のために働くべき』だということを強く感じました。そういう姿勢で働いている方が少ないことは本当に残念だと思います。その典型が自民党時代の6回以上当選すれば誰でも大臣になれるシステムです。何か間違っている気がしました。。

それから政策については官庁に支配されていて内閣が形骸化している、といったことがよく言われていると思いますが、その要因として以下のような実態が語られていました。

すべて役所のなかでは省内、あるいは省庁間での調整が済んだものしか、上に上げてこない。現場で、いま困っていること、判断できないこと、調整していること、については大臣はまったく知ることができない。霞ヶ関の大臣室にいたのでは何も分からないのだ。

根回しのすべてを否定しませんが、責任者である大臣に有無をいわせる余地のない案件しかあがらないのは、何か変だなとおもいました。重要案件ならば途中経過をオンタイムで報告するのが普通の会社でもすると思うのです。
他にもありますので、人によって読んで感じることは違うと思いますので、読んで損はしないと思います。