- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/05/20
- メディア: 文庫
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『永遠の仔』や『家族狩り』などで有名な天童荒太さんの短編集です。天童さんの小説は始めて読みました。
4つの物語から構成されています。詳細については触れませんが、人間の弱さだったり、人間関係の微妙なバランスが崩れる瞬間などが丁寧に描かれていると思いました。どれも痛いお話ですが、筆者はそれを突き放すのではなく、どことなく温かさがあるように感じました。普段一緒にいるのが当たり前パートナーのありがたさに気づかなかったり、弱気も言わず気丈に振る舞っているように見えるパートナーのわずかなSOSを見逃したがために深刻な事態に陥ったりなどは、決して自分にとって無関係な話ではなくて、誰にでも遭遇しうることなのかなと思いました。
最後に筆者が謝辞に書いた言葉で印象に残った文を引用します。
多くの方が、心やからだに傷を負いながらも、懸命に生きていることを伝えてくださいました。生きることの苦しみ、その重さと貴さ、いまここにいられることの<幸い>を、以前にも増して教えていただけたように思っています。