魔法のことば

魔法のことば (文春文庫)

魔法のことば (文春文庫)


写真家の星野道夫さんの講演集です。
アラスカの自然と向き合ったからこそ語ることができる言葉がたくさんありました。特に印象に残った言葉を引用します。

結局、世界中簡単に飛び回ることができるけれども、世界の広さというのは、そこに少し立ち止まって、人と話をして、一人ひとりの暮らしを通してしか絶対分かり得ないと思います。自分が世界地図を見たときに、北海道の清水にはこういう人やああいう人がいて…というふうに思いを馳せることで、少しずつ世界の広さを実感できるような気がして、それは自分がアラスカにいていつも感じることです。

僕がアラスカの自然についていつも思うのは、別にたくさんの人が行く必要はなくて、例えばカリブーの季節移動もアラスカに住んでいる人ですらほとんど見たことがないんです。99パーセントの人は一度も見ないで一生を終えていく。それだけアラスカは広くて、それはそれでいいんじゃないかと思うんです。そこに行く必要もないし、見る必要もない。でも、そこにあるということがきっと大切なんですね。そういう世界が残されているということが、すごく大切な気がします。


アラスカの自然の話も豊富で面白いです。わたしが知らなかった話もいっぱいありました。例えば、クマが人間を襲うのは人間が怖いからだったり、本当の意味での冬眠をせずにうつらうつらしているだけだったりとか。四季が一見なさそうに見えるアラスカでも秋は紅葉が見られたり、ブルーベリーが豊富にとれたり豊かな季節みたいで、星野さんもおすすめしていました。


最後に自分の人生をかけるに足る仕事を見つけることができた人だからこそ説得力のある言葉を引用します。

僕らの人生というのはやはり限られた時間しかない。本当に好きなことを思いきりするというのは、すごく素晴らしいことだと思います。