空爆の歴史

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)


20世紀以降の戦争で登場した空爆の歴史や正当化の論理について書かれています。第二次世界大戦以前の話が半分以上占められていますが、最近のイラク戦争やアフガン戦争、日本の自衛隊の問題などについても触れられています。
本書を読んで思ったことを書き連ねます。

  • イタリアの将軍ジュリオ・ドゥーエの言葉(『空の支配』より)

これからの戦争は「もはや兵士と民間人の区別のない」総力戦であり、そこでは空爆によって民衆がパニックをおこし「自己保存の本能に突き動かされ、戦争を終わらせろと要求するようになる」と説き、住民の戦意をくじくテロ効果を強調して無差別爆撃論を提唱した。「戦時国家の最小限の基盤である民間人に決定的な攻撃が向けられるので戦争は長続きしない」、「長期的に見れば流血をすくなくするので、このような未来戦ははるかに人道的だ」とまで述べている。

彼の考えが空爆という戦法に大きな影響を与えたと筆者は考えています。

  • 太平洋戦争における原爆に対する決定の軽さ

原爆投下後の八月九日に開かれた御前会議では、原爆、空爆にはほとんど触れられず、ソ連侵攻だけにしか感心がなかった、という記述にはびっくりしました。教科書では原爆、ソ連侵攻が無条件降伏受諾の条件として、並列に語られますが、実際のところソ連侵攻が決定打になったと思わざるをえません。しかもソ連よりの軍事力よりも以下に示すような共産革命を圧倒的に恐れていたことから、当時の政府は国民を戦力としてしか捉えずに、専ら国体の保持が最大優先事項だったと思われます。

元首相の近衛文麿が天皇に対し、もっとも憂慮しなければならないのは「敗戦よりも敗戦にともなって起こることがあるべき共産革命」であると上奏した(略)

しかも原爆を投下したアメリカ側の対応もひどく、トルーマンが投下命令の承認を口頭でおこなっただけというのも、今となっては信じられません。

  • イギリスの歴史かグレイリングの考察

ナチズムや日本の戦争犯罪とは規模が異なるが、恐るべき戦争のなかで自国も罪を犯したことを率直に認め、かつ受け入れることのできる文明だけが、過去から学び未来に向けて正しい道を歩むことを期待できることである。

自衛隊がクラスター爆弾を保有していることにはがっかりしました。しかも目的が防衛手段ということに呆れました(今の自衛隊の性格上"防衛"以外の目的の兵器所有はなかなかできませんが)。とはいえ日本の国土に対して投下したら、不発弾など国民に対して甚大な被害者を出すのが明らかです。一刻も早く破棄してくれることを望みます。