普段は文体が得意でないこともあり、歴史小説をあまり読みませんが、本書は読みやすかったです。浅田さんの腕によるところが大きいと思います。新撰組三番隊組長齋藤一が晩年に将校に昔話(新撰組や西南戦争の話など)をする、というスタイルの小説です。
特に斎藤さんの左利きで、突きというスタイルが某マンガのままで、それだけで「おぉ〜」となりました。
斎藤さんの戦闘ポリシーも自分の想像どおりで、それも引き込まれた要因だと思います。その一部を引用します。
すなわち最後に物をいうのは腕前であるにせよ、その腕前を十全に発揮するためには、勘と知恵と胆力とをすりへるほどに使うて、かけひきをせねばならぬ。
剣の奥義は一に先手、二に手数、三に逃げ足の早さ。
やはり京都の話は面白かったです。最初いきなり坂本龍馬の暗殺話から始まりましたので、??となりましたが、描写が嘘っぽくなかったこともあり、ノンフィクションだと割り切って楽しめました。久米部正親、市村鉄之助など自分が知らなかった隊士のエピソードが多かったですが、楽しめました。それにしても近藤勇の描写が残念でした。どの新撰組の小説でも、彼が立派な人物には見えないです...。
鳥羽・伏見以降は読んでいて悲しかったです。西南戦争に関しては、戦闘自体にはそれほど引き込まれませんでしたが、久米部正親、市村鉄之助などとの再会は、印象に残りました。
余談ですが、解説に書かれていた浅田さんの言葉がかっこよかったので、引用します。私は小説家を志望していませんが、プロとして持っておくべき心構えだと感じました。
「作家というのはね、面白い作品を一つだけ書いても駄目なんです。面白い作品をたくさん書かなければいけません。」
(2/May/2014更新)