資本主義の終焉と歴史の危機

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

今まで読んできた水野さんの本は面白かったですが、本著もとても面白かったです。
本著で主張されていることを簡単にまとめると、資本主義が地理的にも電子的にも限界にきていること。今の低金利時代が16世紀の荘園制・封建制度から近代資本主義への転換期と状況が似ていること。もちろん今後のモデルは何かは著者も予想できていませんが、少なくとも従来通りの成長という考え方にとらわれてはいけない、という点は同意できます。
リーマンショックあたりから今のグローバル資本主義が危ういものだと感じていましたが、ここまではっきり述べてくれる本は少ないと思います。テレビのニュースは全く見ませんが、このようなことを語る番組はないように感じています。

資本主義の分析について、特になるほどどおもった箇所をいくつか引用します。

アメリカ金融帝国も、2008年に起きた9・15のリーマン・ショックで崩壊しました。自己資本の40倍、60倍で投資をしていたら、金融機関がレバレッジの重さで自壊してしまったというのがリーマン・ショックの顛末です。

ウォーラーステインは『近代世界システムⅣ』で自由主義について次のように指摘しています。「自由主義は、最弱の者と自由に競争でき、抗争の主役ではなく、犠牲者であるにすぎないか弱い大衆を搾取できる完璧な力を、最強の者に与えたかったのである」と。

グローバル資本主義とは、国家の内側にある社会の均質性を消滅させ、国家の内側に「中心/周辺」を生み出していくシステムだといえます。

資本主義は資本が自己増殖するプロセスですから、利潤を求めて新たなる「周辺」を生み出そうとします。しかし、現代の先進国にはもう海外に「周辺」はありません。そこで資本は、国内に無理やり「周辺」を作り出し、利潤を確保しようとしているのです。
象徴的な例がアメリカのサブプライム・ローンであり、日本の労働規制の緩和です。

私自身は、非正規という雇用形態に否定的です。なぜなら、21世紀の資本と労働の力関係は圧倒的に前者が優位にあって、こうした状況をそのままにして働く人の多様なニーズに応えるというのは幻想だといわざるを得ないからです。結局、労働規制の緩和は資本家の利益のための規制緩和にすぎないのです。