チェルノブイリの祈り

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

引っ越ししてから通勤時間が短くなり、本を読むペースが落ちていましたが、久々に文庫本を読み通しました。

この本は2015年にノーベル文学賞を受賞した作品で、チェルノブイリ原発事故の当事者、被害者のインタビュー集です。
被害者たちの本当に目を背けたくなるような姿が描かれていながら、単純におぞましいものとして描かずに、どことなく人間としての尊厳を捉えているところがすごいと思いました(解説の広河隆一さんも述べていることですが)。
そしてインタビュイーたちの声が力強く、そして文学的に描かれているのは、筆者の力によるところが大きいと思いました。筆者も多くの声を集めるにあたって、以下の心構えだったと述べており、だからこそ素晴らしい作品になったんだなと思いました。

一人の人間によって語られるできごとはその人の運命ですが、大勢の人によって語られることはすでに歴史です。2つの真実ー個人の真実と全体の真実を両立させるのはもっともむずかしいことです。

こんなインパクトが残った本は「夜と霧」以来です。もしもノーベル賞を受賞しなかったら手に取る可能性が低かったと思いますが、そうならずに手元で読む機会を得ることができ、感謝しています。
被害者たちの言葉は、印象に残るものが多く、引用はしません。もしも気になる方がいらっしゃれば、各自で読んでいただくのが良いと思います。