藤田嗣治展

東京美術館で開催されている藤田嗣治氏の回顧展に行ってきました。

【公式】没後50年 藤田嗣治展

藤田嗣治氏の死後50年で、こういった回顧展は初めてだそうです。
今まで藤田嗣治さんの作品に関心がそれほどありませんでした。しかし、最近美術に目覚めた後輩から、本展覧会を勧めれられて、食わず嫌いもよくないと思い、行って見ました。
この日も過酷な暑さで、昼間の暑さを避ける意味でもよかったです。私はお昼ご飯を食べた後に行きました。

混雑度はそこそこで、かなりじっくり鑑賞してしまいました。
夏休み期間でしたが、kidsも少なかったです。最後の土日に美術館行くような子は少ないですね。ただお父さんに鑑賞感想文を書かせていると思われる親子が一組いました。。

本展覧会は彼がパリに渡ってから、晩年までの作品が一通り展示されており、作品の変遷というか、一部時代に翻弄された姿が見れました。回顧展だと作者の人生の文脈が理解できる点でとても面白いというか、知識が深まった気がします。

初期はキュビズムモディリアーニの影響を受けた作品が残されており、試行錯誤したことが伺えました。
人物画では、メランコリックな表情が特徴的でしたが、後年の彼の作風である、白い肌や細い墨の輪郭線なども垣間見れました。
また風景画では、第一次世界大戦の影響か、白や灰色などモノトーンの色使いが多く見られました。派手な作品ではないのですが、結構じっくり見てしまいました。

1920年代からは彼の代表的なモチーフである裸婦や猫の絵がたくさん登場しました。裸婦については、乳白色の色使いにこだわりを感じ、背景も白色ベースの作品が多かったです。猫については毛並みが細やかで本当に猫好きなんだろうなと感じました。

その一方で1930年代では中南米、日本を旅した際には、今までとは真逆のvividでグロテクスな作風でびっくりしました。決して下手ではありませんが、凡庸に感じ、彼の良さがなくなっているように感じました。中南米の空気が彼の作風を変えたのかもしれませんね。とはいえ、水彩画では細い描線が冴え、やっぱり違うなと思いました。
彼自身は日本画を模倣した作品を残していないのですが、このような筆使いが他の近代日本画家との違い、ユニークな点だと思います。藤田さんもその点は深層心理の何処かで意識されていたように思います。

第二世界大戦中は動員され、戦場記録員として翻弄されました。その時代は茶褐色の色合いで、戦場の壮絶な感じなど、見ていて居た堪れない気持ちになりました。

そして戦後、ニューヨークに渡った際に描かれた作品群は彼の作品の集大成のように感じました。「カフェ」で描かれた女性の人物像や、背景のパリの街並み(彼の望郷の念も反映されている)は見事だなと思いました。ポンピドゥー・センターに収蔵されるだけの作品だなーと感じました。このころの人物の表情は穏やかというか好きです。

晩年は洗礼を受けた後は宗教画に傾倒して行きました。宗教画とはいえ、たくさんの人物が描かれた作品について、後輩は漫画見たいなタッチと言っていて、その通りだなと感じました。

本回顧展はなかなか面白かったです。先入観もなく、1つ1つの作品にじっくり対峙したのは久しぶりで、面白かったです。気づいたら3時間近く美術館にいました。こんな機会を提供してくれた後輩に感謝です。

また今回初めてオーディオガイドを利用しました。津田健次郎さんと高本めぐみさんで安心して聞けました。それもじっくり鑑賞してしまった要因かもしれません。特に津田さんは、過去の著作やインタビューで引用された藤田さんの言葉を話されており、彼の声で話されると沁みますね。ナレーションの内容は、絵画の横にある説明文と大差ありませんでした。
話し手が好きな人なら、音声ガイドはありだと思います。