THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術

レトリックとは修辞学と言われていますが、弁論、演説の手法です。
日本では話し方というのを学校などで教わる機会は少ないと思いますが、顧客向けのプレセールスをする場合には必要なスキルだと感じています。本屋で面白そうだなと手に取ったものですが、実際役に立ちそうな本だと思います。


500ページを超える本ですが、具体例が豊富です。家庭内の会話から大統領のスピーチまで様々な例が挙げられています。
序盤で議論とは何か、説得の3要素について書かれていますが、これが本書のキーポイントだと思います。後半になるにつれ、応用的な内容に発展していく展開です。

議論とは何か:口論との違い

最初に議論とは何かについて書かれていますが、口論と混合している人も見受けられますが、一番基本的かつ大事なことだと思います。
以下、本書より大事だと思ったポイントの引用になります。

論理だけでは人間を行動へと駆り立てることはできない。相手に行動したいと「望ませる」ことが必要なのだ。「誘惑は人を操る」ということを受け入れがい人もいるかもしれない。だが、「誘惑」は争いを産まない。

口論になってしまうと、どちらも相手に勝ちたいと思うものだろう。しかし「議論」とは、聞き手を「説得してこちら側に引き入れようとする」ことだ。

最も生産的な議論をするには、論点を「選択」に絞ること。知らず知らずのうちに、論点が「価値観」や「罪悪感」へと逸れないように気をつけよう。聴衆の利益につながる問題解決法を選択することに、焦点を絞ろう。

議論、説得の基本
  • 会話や議論の目的と時制*1を定める
  • 説得に適したタイミングと手段を考える
説得の3要素:エートス、パトス、ロゴス
  1. エートス:語り手の人柄を利用して相手を説得するテクニック。エートスにとって大切な3つの点は「徳」「実践的知恵」「公平無私(思いやり)」。
  2. パトス:聴衆の気分を変え、語り手の論理を受け入れやすい状態にし、語り手の示す目的に自分もかかわろうという気持ちにさせる。「共感」「信念」などがポイント。
  3. ロゴス:論理による会話や議論。


それから本書では、話し方のコツとして、比喩や怒りの感情のコントロールなどの使い方について説明されています。仕事上対話の機会がある人は読んで損にならないと思います。

*1:過去:非難、現在:価値、未来:選択