忘れられた日本

ブルーノタウトの日本建築論に関するエッセイをまとめた本です。
日本人以上に、日本建築について熱く語っています。建築については詳しくわかりませんが、著者の熱意は伝わりました。
特に桂離宮に対する賞賛はすごいです。例えばこんなふうに。
『入り口の門、家屋、部屋、庭園及びその他一切のものが軍隊のように整列し、上官の指揮下に前後左右の隊伍を「編成」するというのではなくて、個々の部分がそれぞれ自己の目的、本文及び意味に従いつつ渾然たる全体を形成して、あたかも一個の生物の如くであるこそ、極めて単純明白でありながらしかもそれ故にまた美しいのではあるまいか。それは自由な個人から成る良き社会の如くである。個々の部分がそれぞれ具有する独自の力、その完全な自由と独立とは、それにも拘らず強固な鎖のように、円満具足した全体的統一を形成している。』


また、建築と伝統に関する以下の考察はなるほどと思いました。

農家は人間の業の共通な点を驚くほど忠実に保存し、全世界の人類は同胞であるという思想の正しいことを如実に証示しているのである。

伝統は言葉をもって語るのではない、建築物を通して話すのである。伝統の話す言葉は、日本人であると外国人であるとを問わず、すべての人々にとって等しく重要である。