半島を出よ

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)


半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)


久々に本の感想です。この本は上下巻あわせて1000ページ近くあったので、読むのに時間がかかってしまいました。
とにかく登場人物が多すぎて、最初は誰が誰だかわからりませんでした(特に北朝鮮陣営)。1章しか出てこない人物が多すぎて(北朝鮮コマンドとイシハラ軍団以外に関しては後で物語に絡むのかなと思わせておきながら)、最終的に放置される人が多いのも難点でした。


北朝鮮のコマンドが福岡を占拠する話。
北朝鮮の捨て駒であるコマンドに福岡を占拠させて日本政府の危機体制を批判したいのかなと思いました。かといって、コマンドに占拠されて終わるのも物語的にあんまりだし、かといって自衛隊とかスーパーヒーローが撃退するのも違うので、特異な趣向を持つイシハラ軍団に撃退の役目を持たせたりしたのかなと思いました。


コマンドが簡単に福岡を占拠したり、イシハラ軍団が簡単に攻略したりつっこみどころもままありますが、日本政府の対応に関する記述は辛辣ながらもそのとおりなのかと思うところもありました。

  • 自衛隊に攻撃命令を出して一般市民が大勢死ぬと、国民的な批判が湧き起こって政権を維持できないと思っているだけなのだ。
  • だが外部の視点で眺めると、もっとも重要なことから逃げているようにも見える。考えたくないことを考えずに済ませるために、どんな小さなミスも許さずに封鎖を敢行するのだと自分を駆り立てているように見えてしまう。わかりきったことだが、最優先事項を決めなければいけないのだ。

それ以外にも著者の多方面にわたる綿密な取材に裏づけられた各種記述はなるほどと思いました。
特に2005年に出版されたにもかかわらず、以下に示すような日米関係の描写は決して架空のお話とは思えませんでした。

  • アメリカがイラン、シリア等の民主化作戦に失敗し、ドルが急落
  • 事実上アメリカの一極支配が終焉する
  • アメリカに冷遇された日本の政治家やマスコミがアメリカ嫌いになる
  • 住基ネットのシステム作りの下請けはインドや中国の会社に任されている