シッコ

シッコ [DVD]

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国民皆保険制度のないアメリカの医療、保険体制の現状をマイケル・ムーア監督が描いた映画。
救急車を呼ぶときには事前に申請していない場合は全額自己負担だったり、79歳の老人が薬代を支払うために働くなどの事例は信じられません。


もっとびっくりするのが、保健維持機構(HMO)の医療審査員という医師が保険が適用されるのか決めるということです。彼らは医師でありながらも保険会社から否認率10%というノルマを与えられ(保険会社にとっては患者の命よりも経費削減のほうが重要)、治療が必要な患者の治療を拒否することすらあるのです。
さらに保険会社はいざ保険を支払う段階になって、既往症の申請漏れがないのかなど加入者のあら探しをして、契約破棄にまで追い込むこともあるそうです。本当に信じられません。保険は本来弱者のためのものであるべきですが、アメリカは保険会社にとって有利な制度にしか見えません。
他人の命を預けるような保険を自らの利益しか考ていないような民間企業だけにゆだねるのはおかしいと思います。全額無料でなくても国家が何かしらの責任を果たしてほしいと思います。保険会社が幅を利かせているアメリカでは国民皆保険制度は当分実現されないでしょうが。


グラウンドゼロのボランティアの救助隊で呼吸器疾患の患者に行政の疾病手当を受けられのもひどいと思いました。9・11直後は英雄とまつりあげながら、彼らが困ったときは手のひらを返したかのような対応には言葉が出ませんでした。


そんな映画ですが、所々笑えるところもあります。そんな困った患者たちをムーア監督が(診断料無料の)グアンタナモ収容所の病院に連れていってしまったのには笑ってしまいました。収容所には入れませんでしたが、いいお話でした。
それにしてもマイケル・ムーア監督も老けたなあと思いました。