宇宙「96%の謎」 宇宙の誕生と驚異の未来像 (角川ソフィア文庫)
- 作者:佐藤 勝彦
- 発売日: 2008/08/25
- メディア: 文庫
1987年の超新星爆発の際に筆者が徹夜してニュートリノ・バーストを解析した話は一番印象に残りました。大変な仕事だとは思いましたが、研究者としてはやりがいのある仕事だということを感じました。そういう世界最先端の研究、開発をしているのは本当に楽しいと思います。
本書の内容を100%理解できたわけではありませんが、個人的に始めて知ったことや重要だと思うポイントを(自分のために)まとめました。
宇宙創世のシナリオ
1. 宇宙は時間、空間、物質のまったくない”無”の状態から、量子重力的効果によって創生された。
2. 創生された量子宇宙は、素粒子の大きさにも満たない、「プランク・サイズ」と呼ばれるサイズの宇宙だが、それが「インフレーション」と呼ばれるメカニズムによって、ただちに何十桁、何百桁と引き伸ばされ、マクロな宇宙となった。そして、潜熱の解放により、”火の玉宇宙”(ビッグバン)となった。インフレーション中の量子ゆらぎは引き伸ばされ、今ある宇宙構造の”種”が仕込まれた。
3. また、その中での「相転移」の進み方が空間的に異なれば、子供宇宙、孫宇宙がその中からも生まれる。それらもまた、マクロな一人前の宇宙へと進化することができる。
4. それらの中から銀河が生まれ、星が生まれ、また人類が誕生するというドラマが進行する。
インフレーション理論で解けた問題
ビッグバン前に銀河や銀河団、グレートウォールなどの”種”を仕込むことができ、平坦性問題や、地平線問題などが原理的には解けるということ。
特に平坦性については、昔、一様であった小領域が引き伸ばされただけのこと。この外が凸凹だらけであっても、何ら構わない。そこは見えていない外の世界だから。
インフレーションモデルだとモノポールが宇宙に(見え)ないということが説明できる。インフレーション前の宇宙が1つのドメインより小さければ、インフレーションで膨張した後では全然見えなくなってしまう。
真空のエネルギーとインフレーション
インフレーションモデルと切っても切れない関係にある「真空のエネルギー」について基本的な点をまとめました。
量子論的真空とは、決して何もない状態ではなく、物質と反物質が生まれたり消えたりして、ゆらいでいるということなる。つまり、真空とは何もないのではなく、物質が最もない状態、エネルギーが最小の状態。
宇宙の土台を作った「真空のエネルギー」が、現在でもある程度残っていたことが観測でわかった。というよりは、実は私たちの宇宙は依然として、物質や光を合わせた量を上回る膨大な「真空のエネルギー」で満たされている。
宇宙は開闢のころ、「真空のエネルギー」に働く宇宙斥力により加速度的に急激な膨張を起こし、その急激な膨張が終わるとき、「真空のエネルギー」が熱エネルギーとして解放され、今日の火の玉のエネルギーとなった。そして、ある時点までくると、もう我慢できなくなり、真空のエネルギーは急落する。