挑発する知

姜さんと宮台さんの対談。国益や安倍政権などに関する対談はエキサイティングでした。今回は引用のみ。

アメリカと対米従属について

冷戦体制下の時代までは対米追従でよかった。(略)
思えば、トンキン湾事件などはでっちあげだし、ベトナム戦争なんてアメリカの覇権エゴが丸出しです。しかし正統性という大枠でみると、「冷戦体制下での防共」という観点から、アメリカのエゴは各国の自発的服従を調達できました。
今では冷戦体制が終わりました。アメリカがかつてと同じように振舞うだけでは、正統性に問題が生じます。アメリカの振る舞いは誰から誰を守る振る舞いなのか。結局、アメリカは自分が垂れ流してきたさまざまな怨念から自分を守るように振る舞うだけです。
(略)21世紀の課題は、正統性問題が起こらないように、アメリカの行動を各国がうまく操縦することです。

エリート教育について

つまり、私のいうエリート教育とは、単なるエキスパートとしての知識を教えることに留りません。誰に対して責任を果たすのかというモチベーション(動機づけ)を学習することが大切になる。自分は、なぜ「いま、ここで」それをやっているのかということについて、動機づけに満ちた自己了解ができるようにならなければいけません。
だからといって「お国のために」というのは勘弁してほしい。ステイト(国家)とネイション(国民)を分けたうえで、国民のためになるように国家を操縦する国民の意欲が、近代の愛国心です。

議員内閣制について

議院内閣制は、1つしかない正統性の源泉に、より近い議会が、より遠い行政を操縦するのです。行政は議会に従属的です。当然ながら、行政を操縦する議会与党にー官僚を操縦する与党議員にー官僚を操縦する与党議員にー政策能力や行政能力がなければなりません。
だからイギリスでは保守党も労働党も、能力の高い議員に徹底して行政実務を経験させます。行政実務から政策立案まで行政実務との切磋琢磨の中で競争させ、優れた能力を発揮した者を当選確実な選挙区に配置して面倒な党務から解放し、専ら行政の制御にあたらせる。それが、議員に大臣をやらせ、最も優秀な者を首相とする、という意味です。
残念ながら日本はそうなっておりません。官僚に匹敵する能力を持った、与党議員のトップ連中が内閣を構成し、トップ中のトップが首相をやる、というふうになっていません。それどころか、国会質疑も与野党を問わず、官僚たちによって振付けられてきました。官僚たちは、議員の権力を恐れるものの、能力を馬鹿にしています。
政策能力や行政能力に乏しい与党幹部が行政に口出しするシステムになっているのです。だからということで、小泉内閣以来「官邸能力の強化」叫ばれました。それが大臣や主相の政策能力や行政能力の上昇を意味するのかと思いきや、主相の周りに補佐官がおかれたり、教育再生会議がおかれたり、という大笑いの事態になりました。
(略)これでは行政官僚がやるきを失います。
(略)首相や大臣に必要な情報を上げなくなります。つまり安倍政権は発足当初から行政官僚による面従腹背に直面していました。