脱「世界同時不況」

本書ではオバマ政権に変わってもウォール街に飲み込まれてしまい、世界同時不況の要因である金融自由化の波を止められないだろうと考察しています。実際、今年の4月2日にロンドンで開かれたG20金融サミットでの以下の状況を読んで、バブル⇄不況の繰り返しは当面続きそうだと思いました。

「100年に一度」の金融危機の最中であるにもかかわらず、結局、G20金融サミットでは毒入り証券化商品の問題についてほとんど話し合われず、ウォール街の「暴走」を抑える世界統一の金融規制については何も決定しなかった。

炭素排出量取引

現在は、規模が小さいために炭素市場で規制はまだほとんどないが、米国で規制されていない「影の銀行システム」が出始めたころの状況と非常に類似点が多い。(略)
炭素取引市場はこれまで以上に深刻な状況に陥ることが懸念される。なぜなら、取引される炭素排出量は物理的に存在している商品ではなく、あくまでも「政治的に作られた、政治的に管理される」市場であるからだ。

環境投資バブルが実現するかどうかは、議会でどのような炭素取引制度ができるのか、そして炭素取引の証券化に関する金融規制のあり方が今後どうなっていくのか、にかかっている。

最初ニュースで話を聞いた時から窺わしいと思いながらも、なぜか上手くできた話だと思いました。炭素排出量取引のアイデアの出元が金融工学ならばよくできた話だというのに合点がいきますし、それ故先のサブプライプローン以上に危険ではないかと思いました。
そして既にエコファンドに資金が1000億も流入しているらしく、一時的に景気を回復する要因になったとしても、じきにそのバブルがはじけるのではないかと心配です。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090807AT2C0401C07082009.html

グリーンエネルギー産業への日本と中国企業

日本の再生可能エネルギーの生産目標は、14年までにわずか1.63%にとどまっている。この非常にお粗末な目標の主な原因の一つは、既存の電気産業や製鉄業などからの反対である。これには経営者だけでなく労働組合も加担している。この非常事態ともいえる経済状況の中でも、彼らは新しい成長分野を促進するという、国益のために妥協するより、自身の国内市場における独占的な地位を保つことに熱心なようだ。

低コスト生産が可能な中国産の環境技術製品の価格競争は他の先進国に対してかなりの脅威を与えるだろう。世界で最もコストの低い太陽光パネルの生産者は、中国のサンテックパワーであり、まもなく2位に転落したシャープを抜く勢いである。(略)

ガソリン燃料の車は非常に複雑な技術を要するため、新しい会社がそのマーケットに参入することは不可能だ。だが、電気自動車はフロンティア産業であるために新規参入しやすい。BYDは、もとはパッテリーメーカーであった。その人材と技術を生かし、今は電気自動車製造に乗り出して活躍しているのである。実は、この分野でも日本は中国から追い抜かれつつあるのだ。

実際ここまで対応に差があるとは思いません(筆者の警鐘の意味合いが強いと思いたいです)が、中国企業は本当に技術力をつけていると思います。低コストなだけでも十分脅威ですが、それに技術力が備わってしまったら競争するのが非常に大変になりますね。


そしてイギリス保守党の人(フィリップ・ブロンド)から以下のような言葉を発しているぐらいですから、最終的にどう落ち着くかは別として時代の転換期に差しかかっていることを実感しました。

今はパラダイムシフトの途中であることは明らかだ。今われわれは新自由主義の終焉を目にしている。