- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03
- メディア: 文庫
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太宰治の中期に書かれた古典や民話を題材にした作品集です。
個人的には表題のお伽草紙がシュールで面白かったです。戦時中に防空壕の中で父が娘に話すという設定からして凄いです。
『浦島さん』の中で乙姫様が無言なのですが、その理由を亀が語っていた言葉が一番印象に残った、といいますか太宰らしいなと思いましたので引用します。
言葉というものは、生きていることの不安から、芽生えて来たものじゃないですかね。腐った土から赤い毒きのこが生えて出るように、生命の不安が言葉を発酵させているのじゃないのですか。よろこびの言葉もあるにはありますが、それにさえなお、いやらしい工夫がほどこされているじゃありませんか。人間は、よろこびの中にさえ、不安を感じているのでしょうかね。人間の言葉はみんな工夫です。気取ったものです。不安の無いところには、何もそんな、いやらしい工夫など必要ないでしょう。