グローバル資本主義と日本の選択

経済学者の金子勝氏、武者陵司氏、橘木俊詔氏によるシンポジウムの内容をまとめた本です。
その中から参考になったコメントを引用します。

現在のグローバル経済の状況

ある種特殊な富の創造のメカニズムが働いていることが特徴なのではないかと思います。これは、インドや中国等において、ほとんど失業状態にある農村における過剰な労働人口が、近代的工場労働者として陶冶されることによって、劇的な生産性の上昇をもたらすことを指します。(略)
そして、このメカニズムがうまく機能している限りにおいては、現在の世界の繁栄が続くのではないか、というのが現時点における私の直感です。インドでも中国でも、極端に安い労働力の供給は、少なくともあと5〜10年は続くのではないでしょうか。(略)
しかし、このような繁栄は、必ずどこかで限界がやってきます。たとえば、インドや中国が100%工業化し、農村からの安価な労働力の供給が遮断された時には、世界経済は著しい困難に陥るでしょう。(略)つまり、長期的には非常に大きなリスクを抱えているのが現在の世界経済であると認識しています。

現在のグローバリゼーションが今後さらに発展していくためには、ただ単に新興国が成長するという形だけではなく、その新興国の成長の果実を先進国が取り込むことによって、先進国も同時に成長していくことが不可欠です。

たしかにBRICの労働者が豊かになっていわゆる中産階級になったときが経済成長における大きなターニングポイントになるという考えは納得できます。ただ具体的なイメージはアイデアが湧きませんね。。

日本経済の今後

公共とは何かを突きつめると、保守だろうが革新だろうが、あらゆる人が共有できる公共的目的は、この国の持続可能性の回復だと考えます。たとえば、財政赤字の膨張、年金不安、少子高齢化の進行、日本の産業競争力の衰退、輸出輸入にとも減っている貿易立国としてのあり方、エネルギー自給率の低さ、食料の自給率の低さ、等等…。あらゆるものが持続可能でない状態に入っているというのが現状ではないでしょうか。私は、その危機感を共有していくことから再出発するのが重要ではないかと思います。

持続可能性を保つことは非常に重要だと思います。ただそのためには1つの1つの問題を着実に解決するしかないのかなと思いました。