突然、僕は殺人犯にされた


約10年近くに渡ってインターネットである殺人事件の犯人だという誹謗中傷を受け続けた芸人のスマイリーキクチさんの体験談です。
この事件自体はなんとなく聞いたことがあった気がするのですが、ここまで深刻な自体に発展していたとは思いませんでした。4月のタイタンシネマライブでひさびさに見て、本書の宣伝をされていたので読んでみました。いろいろ思うことがあり、感想が長くなりました。


最初は警視庁ハイテク相談センタ、管轄の生活安全課、インターネットのボランティア団体、インターネットに詳しくない弁護士等に相談しても相手にしてもらえず、ようやくインターネットに詳しい刑事さん(刑事課)に出会って捜査が進展したそうです。捜査の結果、書き込み主が判明したのですが、嫌疑不十分で告訴までは至らなかったそうです。
特にインターネットのことを知らない刑事、弁護士、検察官には状況の深刻さがまったく理解されなかったので、彼らとの対応は本当に辛かったと思います。その中でインターネットに明るく、親身になって捜査してくれた刑事さんと出会えて、他人事ながら本当によかったと思いました。スマイリーさん自身も以下のように語っています。

警察は、誰かが殺されてなくても捜査をしてくれるところだった。

また担当された警部補さんの言葉を聞くと、こういう人がプロなんだなと思いました。

なぜ警察を辞めないのかというと…、菊池さんのように被害に遭った方々と接し、事件が解決した時、この仕事を選んで良かったと思えるからなんです。

本書でも記載されていますが、警察で捜査してもらうためのポイントは過去にインターネットの事件を扱ったことがある刑事がいるかどうかで、「刑事告訴」したいという意思を明確に提示することだそうです。


それから誹謗中傷を書き込んだ人たちは理解できません(自分も決して他人の手本になるような立派な人間ではありませんが)。

警告をしてからもやまない中傷、警察から犯罪事実を告げられても、何の躊躇もせずに平然と誹謗中傷の書き込みをする行為。この事実は捜査関係者を絶句させた。

しかも刑事さんや検察官には謝罪すると言っておきながら、本人には何も謝罪しない態度等信じられませんでした。露骨な免罪の態度に飽きれると同時に、そのようなことで罪が軽くなるというのもやるせない気持ちになります(裁判等で被告が泣いて謝っているシーンでさえ本心で思っているのかわからなくなりました)。

多くの加害者はネット上のデマ情報を真に受けてしまって、酷い書き込みをしたらしいです。スマイリーさんは彼らを以下のように分析しています。

中傷や強迫を執拗に繰り返した集団は「情報の仕分け」「考える力」「情報発信者を疑う能力」、この3つが欠如しているように感じる。

他人の言葉に責任を押しつける。
自分の言葉に責任を持たない。

これは今回の事件に限らず、ネットに触れる人は気をつけるべきことなのかと思いました。情報のソースが何か考えたり、情報が正しいのか少しでも疑いの態度を持つことや、自分が発信した情報に対して責任をもつことは当然だと思いますし、自分も改めて気をつけなければならないと思いました。
マスコミの情報も必ずしも正しいとは限りませんですし。スマイリーさんの騒動でも以下のような状況があったみたいですから。

「三大新聞」と呼ばれるうちの一つが、中傷された側、中傷した側から何の裏付けもとらずに、ネットの曖昧な情報をそのまま紙面に掲載していた。


最後にスマイリーさんが同様の被害に遭われた方々に対して以下のような言葉を言っていますが、そのような言葉をかけられる人は強い人だと思います。

そういう連中を見返すには、自分自身の人生を有意義に使い、思いっきり幸せになる。そこで生き方の差をつけましょう。そして、自分の人生を振り返った時に「生まれてきて良かった。生きてて良かった」と思える人生を一緒に過ごしましょう。