河北新報のいちばん長い日

河北新報社宮城県を拠点にした地方新聞)が東日本震災時での取材や報道について、まとめた本です。本書で取り上げられた記者、社員の奮闘ぶりは素晴らしいと思いました。また地震翌日の気仙沼の描写は今読んでも強烈で、地震の被害の様子が生々しく思い起こされます。

地震翌日の空撮取材で、ある小学校の屋上でSOS信号を送っている人がいたが、何もできなかったという話は印象に残りました。物資を与えることができないだけでなく、救援すら依頼できなかった(津波のせいで地理感覚がわからなり、場所が特定できなかった)というのは取材している側としては本当に辛かったと思います。これはジャーナリズムの永遠のジレンマだと思います。

福島勤務の記者が原発事故直後に安全のため、一時的に福島を去ったことで記者として気持ちの整理がつかずに、会社を離れたという話も印象的でした。極端すぎる状況だと思いますが、自分の仕事に対して、そこまで向い合うのは大変なことだと思います。

また震災の1ヶ月後に、報道部長が社員たちに関して、私生活を含めた現在の状況についてアンケートをとり、社内で共有できるようにしたこと、いくつかの意見を新聞作成に取り入れたという話は素晴らしいと思います。大企業でないからできたことかもしれませんが、そういう社員の声を拾ってくれると、仕事に対するモチベーションもあがると思います。