ラオスにいったい何があるというんですか?

村上春樹さんの紀行文です。彼の紀行文は肩肘張らずに読めるので好きです。昨年のUS出張(もう1年近く経つんですね)の飛行機の中でさらっと読んだものです。レビューは既に書き上げていたのですが、アップするのを忘れていました。

この本を読んで、旅っていいなと感じました。この状況だから、なおさら恋しく感じられます。
あとがきで次の綴られていて納得しました。

旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります。さあ、あなたも腰を上げてどこかに出かけてください。

本書の表題となったラオスの紀行文の中で、詳しく述べてられています。
自分が何をどう感じるか次第で旅の印象は変わるんだと思います。

ラオスにいったい何があるんですか?」というヴェトナムの人の質問に対して僕は今のところ、まだ明確な答えを持たない。僕がラオスから持ち帰ったものといえば、ささやかな土産物のほかには、いくつかの光景の記憶だけだ。でもその風景には匂いがあり、音があり、肌触りがある。そこには特別な光があり、特別な風が吹いている。何かを口にする誰かの声が耳に残っている。そのときの心の震えが思い出せる。その中に立体として今も残っているし、これから先もけっこう鮮やかに残り続けるだろう。
それらの風景が具体的に何かの役に立つことになるのか、ならないのか、それはまだわからない。結局のところたいした役には立たないまま、だだの思い出として終わってしまうのかもしれない。しかしそもそも、それが旅というものではないか。それが人生というものではないか。