物語 スコットランドの歴史

今までスコットランドに行ったことはないものの、スコッチウイスキーなど興味がある地域で、かつ中公新書の物語歴史シリーズということで購入して読みました。

前半がイングランドスコットランドが合併したグレートブリテン王国成立までの歴史が書かれています。ステュアート王朝以前の歴史は駆け足で描かれています。Amazonのレビューで意見がありましたが、年表があったほうが初見から内容がすっと入った気がします。ステュアート朝での清教徒革命や名誉革命などは世界史で習ったものの、その辺りの経緯を思い出すことができました。
後半ではかつてのスコットランド王国で育まれた思想や文化について書かれています。ジョセフ・ブラックやアダム・スミスなどスコットランドにゆかりを持つ著名な学者が多いんだなと知りました。

以下は、個人的に面白いと感じた箇所の引用です。

イギリスと日本の違い

イギリスと日本との最たる違いは、1つの島のなかにルーツの異なる2つの国が存在しつつ700年以上も対立し続けた、という点であろう。その意味で、ブリテン島はまさに呉越同舟ともいうべき島であったのだ。

よくイギリスはしたたかな国と言われますが、同じ島の中で異なる国と長い間共存してきたことが歴史的な背景にあるとわかると、すごくしっくりきました。

文化について

スコットランドの人たちの文化、アイデンティティイングランドと同化するか、自分達のオリジナリティを保持するか、という間で苛まれてきた要素があると感じました。その中で筆者の文化に対する考察は腑に落ちるところがありました。

「文化」とはなんであろうか。誤解されがちだが、文化とは、単にその人(たち)が大事にしているもの、ではない。そうではなく、そのように大事にしているものを「大事なものだ」と認識する思考・価値観の枠組みのことであり、つまりそれは、「ある社会集団において継承されている、そこでの行動、価値観、思考を規定するような様式の体系」のことなのである。

というのも私自身日本の伝統的な考え方に馴染めないところがありつつも、それに囚われてしまっている自分がいるのですが、そういうことなのかなと思いました。

清教徒革命について

1. スコットランド出身のイングランド王たちは綱渡りの中で統治者として選択を迫られていたこと、2. イングランドをとりまく厳しい国際情勢と、隣国スコットランドとの関係に頭を悩ませつつ、その分断を防ぐために強硬策や懐柔策などを取りながら四苦八苦していたこと、3. 市民革命と言われるが、その内実は貴族の利権と派閥争いがメインであり、そこに宗教的派閥の対立が絡まっていたこと、などの諸事情がそこにはある。そして、こうしたことを理解すれば、イギリス史におけるスコットランドの重要性もみえてくるだろう。

歴史の授業では王=悪、市民(実際は貴族たち)=善と描かれていますが、そんな単純な話ではないと思います。またグレートブリテン成立までの歴史では宗教の宗派の違い、カトリックの介入なども不安定さの要素で、宗教と政治は密着していたと感じました。