十二国記:月の影 影の海

大分前にアニメ化もされた小野不由美さんのファンタジー小説です。シリーズの第1作にあたるもので、これまた大分前に購入して本棚にしまっていました。

この度ようやく読みました。話の筋がわかっているのと、著者の文章の巧みさからかスラスラ読み進めることができました。
ざっくりとした展開は普通の女子高生の陽子がいきなり王様と言われて、異世界へ連れて行かれ、妖魔などと戦いながらサバイバルするというものです。ここだけ切り取ると今流行りのなろう系に通ずる感じもしますが、世界観の深さや主人公の内面描写、世間のあたりのキツさなどがよく描かれており、読み応えはありました。

特に前半は過酷で、出てくる人物が悪人ばかりで主人公が荒む一方でした。

待っている人などいないのに。陽子のものは何一つなく、人は陽子を理解しない騙す、裏切る。それにかけてはこちらもあちらも何の差異もない。

後半では半獣の楽俊が登場し、そこから物事が急転していきました。
楽俊を裏切ってしまった後、弱い自分の象徴である蒼猿と対峙するシーンは見事でした。

人は結局、自分のために生きるものだから、裏切りがあるのだ。誰であろうと他人のために生きることなどできるはずがないのだから。

「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑法になるだけで、わたしの何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」