言語の本質

新書大賞2024を受賞した本で、読んだことがある方も多いと思います。背表紙に赤ちゃんの絵が描かれていて、赤ちゃんがよく使う「オノマトペ」について触れている本だなと認識していました。これから言語を習得する子供が身近にいる立場としては気になっており、先日読み終えました。

オノマトペ」、「記号設置問題*1」をキーワードに人間の言語習得の謎を考えていく趣旨の内容になっており、なかなか勉強になりました。

本書の中で特に重要だと思う論点2つを引用します。

言語習得のきっかけとしてのオノマトペの役割

名づけの洞察は、言語習得の大事な第一歩である。人間が持っている視覚や触覚と音の間の間に類似性を見つけ、自然に対応づける音象徴能力は、モノには名前があるという気づきをもたらす。その気づきが、身の回りのモノや行為すべての名前を憶えようとするという急速な語彙の成長、「語彙爆発」と呼ばれる現象につながるのだ。語彙が増えると子どもは語彙に潜むさまざまなパターンに気づく。その気づきがさらに新しい単語の意味の推論を助け、話を成長させていく原動力となるのである。
音と意味が自然につながっていて、それを赤ちゃんでも感じられることが、「単語に意味がある」という「名づけの洞察」を引き起こすきっかけになるのではないか。

言語習得のプロセスとは

ブートストラッピング・サイクルによる学習では、知識はつねに再編成され、変化を続けながらボリュームを増し、構造も洗練されていく。節目節目で重要な「洞察」が生まれ、「洞察」が学習を大きく加速させたり、概念の体系を大きく変化させたりする。つまり言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体を学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである。

*1:認知科学者のスティーブン・ハルナッドは、人間が機械に記号を与えて問題解決をさせようとしたAIの記号アプローチを批判し、記号の意味を記号のみによって記述しつくすことは不可能であると指摘した。言語という記号体系が意味を持つためには、基本的な一群のことばの意味はどこかで感覚と接地(ground)していなければならない、というのが彼の論点である。