燃えよ剣

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)


燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)


高校の時に上巻だけ読んでいたのですが、通勤で本を読む時間が十分にあるので上下巻を通して読みました。


剣客のお話としては下巻冒頭の七里研之介を倒すまでのあたりで、後半からは軍師としての姿が描かれています。

最初は剣客編のほうが好きでした。特に上巻の京都守護職御預になってから池田屋事件までが圧倒的におもしろいです。
というのは、池田屋事件以降は味方を殺したり、幕府側や局長の近藤の戦術が薩長側に比べてお粗末すぎていまいち楽しくなかったからです。しかし、逆境になるほど軍師としての土方が他のどの登場人物よりも輝いて見え、孤軍奮闘している姿はすごいなあと思うようになりました。意外だったのは京都にいた頃まではずっと剣に生きてきた男が大阪でオランダの戦術書に出会ってから(もしくは鳥羽伏見で負けてから)、自分の考えを変えて勝つために必要なものを貪欲に吸収したことです。それによって、軍師としての考え方の幅が広がって、さらに強くなったように思いました。


剣客では土方、沖田は勿論かっこいいです。土方の戦闘シーンですごかったのは、和泉守兼定ではじめて人を斬るところですね。
それ以外には北辰一刀流の剣士も好きでしたね。伊藤甲子太郎、山南敬助は好戦的ではないとはいえ、かなりの腕前にも関わらず戦闘シーンが少なかったのは残念でした。とくに山南敬助が脱走するくだりで沖田とのやりとりが最高によかったです。山南さんの潔さはなんともいえない。また藤堂平助が最後戦うシーンは悲しくなりました。
あとは下巻でたまに登場する斎藤一がかっこいいですね。某漫画の影響が大ですが、単純に強いだけでいいです。函館まで戦って生きていたのは凄すぎです、最後土方と別れるシーンはジーンときました。


以前読んだときはあまり何とも思わなかったのですが、戦闘で人を斬るシーンの描写が生々しくて怖かったです。血に弱くなったせいかな?司馬さんに限らず時代小説での戦闘シーンの描写はすごいと思いますが、むしろ昔はそういう描写を徹底できるメディアは小説しかなかったからなのかなとも思いました。
というのも、昔ながらの時代劇はいかにもちゃんばらで、人を斬っている感じがあんまりしないと思ったので(今でいうところのR指定される描写を徹底したものはなかったはずですよね)、昔は徹底した描写を味わうなら本しかなかったのかなと思ったりしたからです。


以前読んだとき池田屋事件とか土方の性格などはなんとなく印象に残っていましたが、武州でのエピソードは全く覚えていませんでした。七里研之介や猿渡佐絵のエピソードも面白かったです(七里一味が多摩から撤退するのはあっけなさすぎましたが…)。彼らは先に京都へ向かうのですが、忘れた頃に登場するので、ストーリの流れの点でもよかったです。

以前読んだときは戦闘シーンとかが楽しく読めましたが、今はそっちよりも土方の恋愛シーンのほうがいいなあと思いました。特にお雪との出会いと大阪を出る直前の旅行のシーンは本当によかったです。