- 作者:佐藤 優
- 発売日: 2017/04/19
- メディア: 新書
元々は佐藤優さんの講演の書き起こしのようです。最初に本題とは関係のない感想を書きます。
そもそも話し言葉のため、内容が平易ですが、それに加え論理的に話が組み立てられているので、内容がスッーと入っていきました。講演で話を組み立てて話すためには、話す内容に関して反芻して理解していることだけでなく、訓練が必要だなと思いました。
本書で述べられた中でなるほどと思った点をいくつか挙げます。
『作戦要務令』*1と日本組織に根ずく独断専行
要するに日本の『作戦要務令』の特徴は、「うまくやれ」ということにあります。
外国(欧米、ロシア、イスラエル)では、独断専行ではなくて、明確な枠のマンデートを与えて、その中で行動させる。だから「うまくやれ」というのはあまりない。権限が非常にはっきりしていて、その中での裁量が与えられているというのが多いのです。
外務省でも独断専行で何かをやる人間というのは、社交的で、自分が所属する部局の外にも味方をもっている。人たらしだし、根回しが上手です。独断専行というのは結局のところ、何かをバイパスするということです。(略)
独断専行できる人間というのは、中堅だけれども、実は幹部クラスの見識があるといえます。独断専行が問題になるのは、権限と能力に乖離がある場合です。
日本と海外の組織の権限の違い、背景についてしっくりきました。
日本企業の場合、権限が明文化されてない割りに、裁量を求められていて、その中でうまく立ち回っている(上司に気に入られる)人が出世する理由がしっくりきました。
プロテスタンティズムという思考のの鋳型
以下のようなポイントは日本人にはない考え方だなと感じました。
- 人生の様々な困難に遭遇しても、自分が死後選ばれる人間という確信があるから、乗り越えられる
- 穢れは取り除くことができないもの、例えば新年になった時に(いわば過去をリセットして)新しくなったという感覚はない
欧米では新年のお祝いはしないと聞きますが、その背景に後者に示すような宗教に基づく深層心理があるんでしょうね。