世界を制した中小企業

世界を制した中小企業 (講談社現代新書)

世界を制した中小企業 (講談社現代新書)


製造業でトップの技術力や世界的なシェアを約40社の約40社の中小企業を紹介した本です。
基本的には独自の技術をベースにしていながらも、『多くの企業が注目しない早い段階からその分野の将来性を見越して、技術やノウハウを蓄積することでトップに立った会社と、逆に多くが撤退していく中で、事業を守り抜くことでトップになった会社』がやはり競争力を持つんですね。
また、『その一方で、技術やノウハウを利用した新製品の開発にも熱心だ。さらに新しい市場を作り出そうとして、他社が簡単に真似できない新製品の開発に成功した。』ことも競争力を持続するためには必要だと感じました。


その基本になっているのが以下の考え方です。

  • 『一日でも油断していたらトップの座から滑り落ち、一週間油断していたら数年後には会社がなくなっている。』
  • 『特殊な分野で、しかも優れた技術があると思って安心していると、必ず強力なライバルの侵入を許すことになる。』


なるほどだと思ったのは以下の3点。

  • コストダウンできるところはIT化をし、どうしても精度が求められる作業については熟練工による手作業を残すという決断は大事だと感じました。
  • 『世界最高レベルの研究を行っている大学に研究生を派遣したのことは一度や二度ではなく、経営が苦しいときでも続けてきた。』
  • 中日本ダイカストが、バブル期に優良顧客として今後も取引を続ける企業と、取引を続ける必要がない企業を選別したことはびっくりしました。異常な景気が長続きするわけないのだから、設備を増強しなかった会長の姿勢はすごいです。技術力を評価せずに、コスト削減にこだわる顧客との取引を削減することはなるほどと思います。


ただ日本の大手企業には話すら聞いてもらえず、海外の会社に契約通りの製品を提供することで認められ、日本の企業にも認知されるようになるエピソードが多いのには……。そういう意味では本当の技術力のある企業にとっては海外企業の方が(シビアだが)公平なので、取引相手としてはいいんでしょうか。


最後に地元の太子食品が取り上げられていたことにびっくりしました。子供の頃、太子食品の納豆はよく食べていたものです(本誌では豆腐の技術が紹介されていましたが…)。
それにしても地方青森の企業なのに研究者が60人もいるというのは驚きです。