インド

タイトルの通り、インドの社会、政治、経済などについてまとめられており、インドの現状を把握するには有益な本だと感じました。
そもそも一番最初に就職した会社で(今から20年近く前の話ですが)インド支店を立ち上げて、そのコミュニケーションに苦心していたのを見ていた経験があり、気にはなっていた国でした。結局、そのインド支店をうまくコントロールできず、最終的には解散、という残念な結果になり、それ以来インド人とのコミュニケーションは難しいなと構えていました。またここ5年ほどインド人と仕事で関わる機会がなかったこともあり、最近の変化やトレンドを把握したく、購入したのですが、そういう人には良書ではないかと思います。

インドの政権の変遷や大財閥が経済を牽引していることなどは初めて知ることで勉強になりました。例えば、現政権のモディ政権の主な実績として『インフラ整備、投資環境の改善、汚職撲滅』を挙げています。確かにインドは技術力が高いとはいえ、汚職が蔓延っていてそれゆえ外資企業の進出が進まなかったように感じていたので、その認識は改めた方が良いなと感じたものです。


国際政治では、冷戦期に旧ユーゴのチトーと非同盟主義を掲げていたことは知っていたものの、ソ連のアフガン侵攻以降はソ連と距離が近くなったり、習近平とは距離をとっていたり、など今後国際社会の中でのプレゼンスが向上するなと感じまいした。直近の経済トピックで言えば、スマートフォンのシェアにおいて、サムスンがトップで一方でコストパフォーマンスが高いはずの中国勢が伸び悩んでいますが、こういう背景が大きく関係しているなと実感しました。
最近では南半球に多いいわゆる発展途上国の国々は「グローバルサウス」と呼ばれており、著者はインドをその「グローバルサウス」の大国と捉えています。それを旗印に積極外交を展開する理由に関する引用を紹介して閉じたいと思います。

第一に、インドが経済大国の道を歩み始め、IMFのゲオルギエバ専務理事も言うように世界経済の牽引車となっていくとともに、経済大国としてのその自が、インド外交をより国際社会に向けて積極的な発言をしていく方向へ導いたに違いない。
第二に、ロシアのウクライナ侵攻以来、西側の先進国からロシアを批判せず、原油を購入し続けていることを責められてきたことに対して、インドは「グローバル・サウス」の国々のためという大義名分を使って反論しようとしたと思われる。
第三に、インドはその「非同盟外交」の再構築を「グローバル・サウス」という言葉を用いて試みたに違いない。
第四に、カシミール問題等で米国や欧州諸国から人権問題にいろいろな形でロ出て、モディ首相やジャイシャンカル外相が西側諸国に対する失望感を強めていった由の一つにあるかもしれない。
最後に、2024年の春に総選挙を控え、モディ首相がグローバル・サウスの代表として、外交の舞台で指導力を発揮したことを国民に印象づける目的もあったと考えられる。