永井荷風さんの言葉

現代の西洋文明は皮相に止り、其の深き内容に至つては、日本人は決して西洋思想を喜ぶものでない。寧ろ日本には西洋人が黄禍論を称へるより、もつと以上の強い排他思想が潜んでいる。
日本を包む空気の中心に立憲政治の今とても、封建時代の昔に少しも変わざる一種名状すべからざる東洋的、専制的なる何物かが含まれていて、いかに外観の形式を変更しても、風土と気候と、凡ての目に見えないものが、人間意思の自由、思想の解放には悪意を持つているらしいやうに思はれてならぬ処がある…
(出典:「紅茶の後」)

1910年に出版された本に書かれたことばですが、当時は一般大衆のみでなく政治家も西洋思想というものに対して理解しきれず、疑念というものをもっていたのかなと思います。今の日本人も自由よりも規制とかそれに伴う責任というものを重視しすぎているきらいが感じられます。そういう側面ももちろん大事ですし、日本と西洋で文化は違うのですから西洋思想をありのまま受け入れる必要はない(なんでもかんでも自由にすればいいというわけじゃない)と思いますが、先人が勝ち取って来た自由、平等という考え方が踏みにじられないように大切にしたいと思います。