立て続けにアフガニスタン関連の本を読みました。こちらの本はフリーの国際情勢解説者によって書かれ、10年以上前に発行されたものです。昨年重版されたそうで、その際に購入しました。
本書は大雑把に、タリバンの経緯とオサマ・ビンラディンとの関係性などアフガニスタンの政治事情がまとめられた章と、著者が2001年頃にアフガニスタンに滞在した内容が書かれた章で構成されています。
政治事情については1章が簡潔にまとめられていると思いました。タリバンもオサマ・ビンラディンもざっくり言うと旧ソ連のアフガン侵攻の対抗勢力として造られたものですが、湾岸戦争が終わった後からオサマ・ビンラディン一派をはじめとする反米テロが各地で起こったそうです。そして、タリバンがオサマ・ビンラディンを受け入れたあたりからアメリカの風当たりが厳しくなったそうです。例えば、タリバンの女性に対する服装などの強要はアメリカに支援された時から変わらずであるにも関わらず、20世紀の末期頃はアメリカから強く非難されたようで、政治的な思惑を感じざるを得ませんでした。
著者のいわばアフガニスタン滞在記での肌感覚は先日読んだ中村哲さんのものと通ずるものがあり、現地の人の感覚や考え方がメディアのいわゆるアメリカ視点のものとは全く違うんだなと感じました。
あるアフガン人の国連職員が、多くの国民が望んでいることなのかなと感じました。
オサマはアラブ人だ。アラブ人もアフガン人を支援する姿勢を見せながら、その実はアフガニスタンを思いのままに支配したいと思っており、その点ではパキスタン人と変わらない。われわれは自分自身でアフガニスタンを運営したいのであり、それに介入する外国人は、どこの国の人であっても歓迎できるものではない。
彼はアラブ、パキスタンを非難していますが、アメリカも含まれると思います。著者も最後このように閉じていますが、同意します。その一方でタリバンや各種アフガン現地勢力の政治運営能力が低いため、なかなか情勢が安定しないように見えるので、難しい問題だなと思います。
日本や欧米の人々に「正義感」があるのなら、タリバンの壊滅を望む前に、アメリカの都合でアフガニスタンの人々が苦しんでいることを何とかしようと考えるべきではないだろうか。
余談になりますが、本書の最後で1999年にロシア首相に就任したプーチンが「チェチェンに対して強行姿勢を取ることで愛国心を発揚し、支持率を上げている」と書かれています。彼の政治姿勢として20年前と基本的に同じなんだなと思ったりしました。