失敗学のすすめ

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

「失敗学」という考え方を提唱された畑村さんの著作です。理系といいますか論理的に仕事をしている方にとっては当然なことを述べているのかなと思います。本書にも書かれていますが、「失敗の法則性を理解し、失敗の要因を知り、失敗が本当に致命的なものになる前に、未然に防止する術を覚える」ことは何事においても重要だと思います。自分の職場で起きている問題と照らし合わせて、いろいろ考えさせられました。

個人的になるほどだと感じた箇所を引用します。

どんな仕事をする上でも必要な素質

勝負事は痛い目にあわないと身につかないという。ノウハウの多くは失敗から生まれる。他者の失敗であっても同じである。しかし、他者の失敗から学ぶには、学ぼうとする目的意識が強く、高い科学技術の基礎学力がなければ不可能である。

会社で失敗のケーススタディを振り返る機会などあると思いますが、当事者意識で考えないと時間の無駄だと思います。

優秀なメーカーの営業マンの条件のひとつに、「自分の会社のものの流れをよく把握していること」というのがあります。

理系の仕事は専門化していてタコツボ化しているところが多いと聞きますが、全体の流れ、少なくとも自分の担当分の前行程、後行程くらいは把握してないとまずいと思います。

管理する側の問題

「まさかこんなことが起こるとは…」
が失敗を引き起こしたときの決まり文句になっていますが、多くの場合、言葉通りに受け取ることはできません。
設備投資をせず、それでいて生産量を三割増、五割増という背景があったり、技術の成熟の問題、生産コストのダウンなどの条件があれば、これを管理する側は、そのとき失敗の可能性も高まっていると考えるのは当たり前だからです。予測できるはずの失敗を見逃した結果、大事故、大トラブルを招いたとすれば、「確信犯と同じ」と見られて厳しく責任を追及されるのは当然です。

失敗の責任を現場の担当者のせいではなく、管理する側の視点で考えることは大事だと思います。そうすることで組織が犯す失敗を繰り返すことを防げると思うからです。

偽ベテラン

いわゆる偽ベテランに多いダメ上司が軽薄な失敗体験談を話す背景には、多くの場合、それまで慣れ親しんだ方法を変えられるのが面倒だという身勝手な感情があります。特に老齢化の著しい組織でよく見られるパターンで、その中で真剣に改革を提案していこうとする人は、ダメ上司の説得に時間を浪費し、心を疲弊させられることになりかねないので本当に困った存在です。

本書では致命的な失敗の原因とまで糾弾してますが、そこまで問題な存在なのかはわかりませんが、そういう存在は本当に本当に厄介です。それでしかも、高い給料もらってるからタチが悪いです。

データベース化

それぞれの情報について内容が一目で分かるように、ひとつひとつ失敗の事象と組織化をひとくち言葉で表して記述しておく必要があります。こうすると、どんな失敗の系統に入るのかが、整理しやすくなるからです。
また、ここで重要なのは、失敗の情報を知識化するという点です。大手自動車メーカーの失敗データベースにかけていたのが、まさしくこの知識化の部分でした。(略)失敗情報の最後に知識化があるのとないのとでは利用度も全くちがってくるのです。そしてこの知識化がないデータベースは使いようがないのです。

データベースを取ることは必要ですが、そこからエッセンスを抽出したり、取捨選択する作業を随時行わないとデータが肥大化して、誰もがアクセスしなくなります。それこそ記録を取るためだけの仕事を強いてるだけで、コスト増にしかならないです。とはいえ、データベースのメンテナンスは大変で、誰もやりたがらなくて、それが問題だと思います。