超マクロ展望 世界経済の真実

エコノミストの水野さんと哲学者の萱野さんとの対談です。お二人の対談は経済現象を歴史の中の位置づけなども考慮されており、なかなか面白かったです。
水野さんについてはリーマンショックの頃から知っていましたが、萱野さんは本書で始めて知りました。萱野さんの説明はわかりやすく、経済のことをよく存じ上げている方だなと感じました。
個人的に重要だと思ったポイントを引用します。

資源価格高騰のインパクトについて

20世紀末からはじまった資源価格の高騰は、そういった次元では対処できない段階に入ってしまいました。新興国の台頭によって、エネルギーをタダ同然で手に入れることを前提になりたっていた近代社会の根底が揺さぶられているのです。
資源価格の口頭が何を意味するのかというと、新興国の台頭によって先進工業国がいままでのように安く資源を買い叩くことができなくなったということです。

金融経済化について

生産の拡大ができなくなってしまったからこそ金融化にむかい、金融経済で利潤率を稼ごうとする。つまり、金融拡大の局面というのは、その国のへゲモニーのたそがれどきだということです。そして、金融拡大の局面で蓄積された資本が、つぎの新しい覇権国へと投資される。

とりわけ第一次オイル・ショックを契機として、新興国、資源国の交易条件は急速に改善していきました。反対に先進国の交易条件は悪化しました。そしてご指摘のように、先進国の企業が儲からなくなったということです。
つまり、先進国は資源を安く買い叩くことができなくなって、モノをつくって輸出しても儲けがどんどん減ってきてしまったと。

人民元の自由化と財政再建

人民元が自由化されると、円預金が金利の高い中国へと流れていってしまうので、銀行は国債を消化するための預金をもてなくなってしまう。
銀行は円預金負債がなくなってしまったら、貸出が増えても増えなくても、とにかく預金が減った分だけ日本の国債を手放さなくてはいけないのです。ですから、財政赤字人民元の自由化の前までに解消しておかなくてはなりません。

財政の見直し

こうした低成長のもとでは、おそらく現行の税体系を変えなければ税収は40兆円台でしょう。その一方で、歳出のほうは、利払いと社会保障費の自然増で拡大しつづけるわけですから、そのままではいつまでたっても財政再建できません。ですから、税収が一定値であることを前提にして、歳出も一定値におさまるようにする。そして歳出を一定値におさえたあと、それでも初期値の財政赤字があるわけですから、その財政赤字は消費税なり何なりの増税で埋めていき、埋め合わせたらこれ以上は増税しませんということを提示する。とにかくまずは、歳入が伸びないことを前提にこういう予算編成でやってきますよという姿を提示するのが先決だと思います。

前々から指摘されていることだと思いますが、国は経済構造の変化を早く把握して、それに柔軟に対応しないと財政が破綻するのは当然だと思います。