- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11
- メディア: 文庫
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伊坂さんのデビュー作。外部との交流がない不思議な島(荻島)を舞台にした小説です。
しゃべる案山子や島民は癖が強く、かつ一見何の関連性もなさそうな出来事が続くので、正直最初とっつきにくかったです。しかし話の展開は見事で1つ1つの出来事に伏線が張られていて、最後のタネ明かしの段階は本文中にありましたが、『パズルの欠片が、次々とはまりはじめる感覚』でおもしろかったです。最後の畳み掛けというかまとめ方は見事でした(ネタばれになるので詳しくは書きませんけど)。
最後物語のタネが明かされる頃には癖は強い島民たちが実は不器用だったことがわかると登場人物に共感できるようになったので話の作り方がうまいなあと本当に感心しまいました。特に園山さんの話はしんみりしました。未来を知っているがゆえに周囲から頼りにされている案山子も辛かったんだろうとは思いますし、だからこそ大事なものを守るために死んだというのもわからなくはないなと思いました。
その他では不幸な事故で夫と子供を失った老女の言葉がいちばん印象に残りました。
「だから、何があっても、それでも生きていくしかねえんだ」
家族が殺されても、死にたいほど悲しくても、奇形で生まれてこようと、それでも、それでも生きていくしかないんだと彼女は言った。なぜならそれが一度しかねえ大事な人生だからだ、と。