Ryuichi Sakamoto: CODA

”教授”というニックネームでお馴染みの故坂本龍一氏のドキュメンタリー映画です。坂本さんがお亡くなりになった3月以降のいつかのタイミングでHuluのトップページで紹介されるように気になっていました。先週末時間を見つけて見ることができましたので、その感想になります。
まず率直に言ってエンターテイメント性を排除した、徹底的なドキュメンタリー映画だなと感じました。最近は硬派なドキュメンタリー作品を見ることがなく、久しぶりに良質なドキュメンタリーを見たなと思いました。
時期的にはアルバム"async"の制作時期で、その制作背景がメインで、並行して彼の過去の主な業績について触れられる、という構成でした。アルバム制作では、タルコフスキーの映画音楽(惑星ソラリス)を意識していたようです。

とにかく教授の徹底的に探求する姿に驚きました。当時60歳を超えていたと思いますが、それでもなお一日中音楽に向き合っている様に畏敬の念を頂きました。私が将来その年齢になった時、彼のようにひたむきに向き合えるものがあるのか?合った場合、そのように向き合えるのか?など思いながら見入ってしまいました。
若い頃は色々やんちゃだったエピソードも聞きますが、あのように音楽に向き合うのは素直にかっこいいなと思いました。世捨て人のようにも見えてしまったほどです。
一つは2014年にガンを発病し、その療養を乗り越えたことが大きいようにも感じました。詳しくは語られませんでしたが、大量の薬を服用するシーンなどを見て、辛いことは伝わりました。

過去の数ある仕事の中で一番印象に残ったのは、ラストエンペラーでの無茶苦茶な音響制作の仕事ぶりです。超人的ですごいなと感じました。自分には到底無理な無茶ぶりでしたが、それをやり切れたことが、彼のポジションに押し上げた要因であることは間違いないなと思いました。
この他には映画の冒頭で教授が震災で大損害を被った学校を訪問したのですが、その屋上から見た景色には絶句しました。海岸方向には何もなく(津波で一掃されたと思われます)、遠くに海が見える様は津波の恐ろしさを思い出しました。昨今の環境運動には同意しかねる側面はあるものの、だからと言って安直に原発に賛同し難いなという思いになりました。