文明の生態史観

読了した後からしばらく時間が経ってしまいましたが、そのレビューです。私が生まれる前に書かれたものですが、文章が平易ですらすら読み進めることができました。

最初に収録された「東と西のあいだ」はパキスタン〜インドを旅行した際の印象紀ですが、そこに記されたインド人の見方(例:インド人は自尊心が強い)は私としては特に目新しくはなかったものは、当時としては未知の世界の話として受け止められたかと思います。
1つ面白いなと思ったのは世界中に中華系の人たちが進出しているのにインドでは全く見かけないというエピソードです。

筆者が滞在中に感じた『アジアとはいえ、西から侵入したアーリア人の影響が強いため、人種・文化的に中国を始めとした東洋とは別の文化圏で、むしろ西にある中東などの方が近い』という考え方は後の「文明の生態史観」に大きく影響したんだなと、読み返した際強く感じました。

1957年に書かれた「文明の生態史観」で筆者が考える文明のモデルが提案され、本書の根幹をなす論評だと思います。
ユーラシア、北アフリカ地域をざっくり2つの地域に分けるというモデルです。このモデルの要点はWikipediaからの引用となりますが、以下の通りです。

それによると、西ヨーロッパと日本は第一地域に属し、その間をなす、広大な大陸部分を第二地域とした。第二地域においては早い時間で巨大な帝国が成立するが、それらは制度などに問題を抱え、没落していくという。逆にその周縁に位置する第一地域においては気候が温暖で、外部からの攻撃を受けにくいなど、環境が安定している為、第二地域よりは発展が遅いものの第二地域から文化を輸入することによって発展し、安定的で高度な社会を形成できるとした。

第二地域の主な構成要素は、中国、インド、ロシア、地中海・イスラーム地域ですが、それぞれ19-20世紀まで清王朝ムガル帝国ロシア帝国オスマン帝国によって支配されていました。それ以前にも外部からの侵略をトリガとして何度も王朝が入れ替わりました。

個人的には日本が西欧と同じ第一地域というカテゴリ分けされているのは引っ掛かりましたが、筆者がいわゆる日本論を意識してモデル化したわけではなく、アジア諸国を歴訪して、その時に感じ考えたモデル、ということで傾聴に値するかなと思います。