ソラリス

以前映画版をみたことはあるものの正直難解でよくわかりませんでした。映画版だとタルコフスキー監督の芸術性と言いますか世界観が強く、哲学的な要素が強い作品という印象でした。
とはいうものの本屋でこちらの本が見つけた時、買ってみてもいいかなという気持ちになり、改めて購入して読んでみました。また本書はSF作品の古典と呼ばれるものですし、本で何回か読めばもしかしらた当時よりも理解できるかもしれないという気持ちもありました。

冒頭は主人公から宇宙ステーションから発射され、惑星ソラリスに着陸するまでの様が描かれており、最初は宇宙SFなのかなと感じたほどです。しかし同僚となるはず人間が死んでいたり、既に死別したはずの恋人と再会したりとサスペンスの様相を呈しながら、話が展開されます。所々で学術用語のような難解なワードが出てくるのもありますが、主人公をはじめとした研究者たちが対峙するソラリスというのが、私の理解を超えた存在であるため、それが故に本作を難しく感じていたと思います。

ロシア語版の原著に書かれた作者による序文でこのように書かれています。

最も私は、より広い視野に立ってこの問題(地球外生物とのコンタクトがどのようなものになり得るか)を論じたいと思っていた。つまり、私が重要だと考えていたのは、ある具体的な文明を描いてみせるというより、むしろ「未知なるもの」をある種の物質的な現象として示すということだったのである。(略)
こうした「未知なるもの」との出会いによって、人は認識の問題、哲学の問題、心理的問題、倫理的問題などを抱えることになるはずだ。(略)
ソラリス』は他の星にいたる道の途上で、理解不能な未知の現象に出会った場合の製作見本となるはずの作品である。(略)
しかし、理論的、抽象的な学術論文を書こうというつもりもなかったので、あくまで具体的な物語を作って、物語の力を借り、物語を通して、ひとつの単純な考えを提示することになった。はるかな宇宙には「未知なるもの」が待っている、という考えである。

筆者は、地球外の未知の生命体と対峙した時、人間の理解の範疇で収まらないケースもあり、その場合の物語を書いたんだなと一読して、解説を読んでから理解しました。1回目読んだ時もちんぷんかんぷんな場所がたくさんありましたが、筆者の思惑を読んで、むしろ理解できないのが正しいかもと思ったほどです。

終盤で、主人公は「神とは何か?」という問いかけをします。SFではありふれた主題だと思いますが、もしも私が主人公の境遇だったら、そんなのを考える余裕がないほど混乱しそうな気がします。
逆に言えばただの宇宙を舞台にしたアクションをメインとした作品を期待するとがっかりしますが、なかなかに深い作品だと感じました。
最後に主人公と再会した恋人との描写がロマンスに溢れていて、いい意味でハードなSF描写とは対照的で、作品に深みを与えているように感じました。スティーヴン・ソダーバーグ監督の映画版だと、恋人描写が強すぎたようで、原作者に評価されなかったようで。。読者によって様々な感想を持ちうる作品なのだと思います。私自身、何十年後かに読めば、また違った印象を持つような気もします。

一言で言って深い作品で、私にとって良い読書体験になりました。