- 作者:荻原 浩
- 発売日: 2007/11/08
- メディア: 文庫
この本を読んで思ったのは、アルツハイマーであれ何であれ重い病気に罹ったときはその病気と向き合うことが大事だと思いました。
アルツハイマーを患った人は周囲の人間が信じられなくなって、怒りやすくなり、人格が崩壊することもあるそうです(このお話の主人公は違いましたが)。それもまず自分が依然とは違うことを自覚し、その上で他人と向き合うことが大事なのかなと思いました。もちろん周囲の人間も変化を受け入れなければ、ケアのしようがありません。
たしかに主人公の周囲の多くの人々は幸いにも変化を受け入れてくれる人ばかりだったので、悲惨なことにはなりませんでしたが…。取引先の河村課長が転属された主人公を励ますシーンなんかはよかったです。
ただ、ラストで自分の妻を忘れてしまったところはなんとまあ、残酷だなと思いました。風景描写が美しかったぶん、なおさら残酷でした。それでも旦那の痴呆を受け入れられたら、ほんとにすごいと思います。
なんか印象に残った一文。
この体は本当は自分のものではなく、誰かからの預かりものではないのだろうかと思えてくる。
アルツハイマーについての豆知識
幼児が感情を獲得し、言葉を覚え、知識と記憶をたくわえ、計算能力を発達させ、じだいにひとりでなんでもできるようになる。これとまったく逆の現象が起きていくのだそうだ。
大切な家族を子ども扱いすることはつらいことですが、患者がいま何歳のレベルであるか知っておくことは、介護の準備と訓練の上での重要な指標になります。
ちなみに、このお話は数年前に渡辺謙主演で映画化されています。映画の方が感情的に激しいです。渡辺謙の演技がすごかったです。個人的にはどちらかといえば原作のほうが丁寧に描かれているので、好きです。