私の財産告白

以前ある節約系YouTube動画で紹介され、気になっていた本です。図書館で借りて読みました。
前半は貯蓄、投資などお金の貯め方、増やし方、使い方に関する著者の経験に基づく考えが書かれています。戦後間も無い頃に書かれたものですが、基本的な考えは現代でも通ずるもので驚きました。文体は平易で抵抗感なく、さくさく読み進められました。

自分は何度も聞いたことがある話でしたので、それ自体に新たな発見はありませんでしたが、戦前の日本でもこのように財を築いた方がいたことに驚きました。
後半部分(私の体験社会学)では、著者の勉強法や上司部下の付き合いなどの考え方が書かれています。最初は目当てだったお金関係の話でなく肩透かしを食らった気分でしたが、こちらも現代でも通用する(むしろ実践できていない人が多いくらいの)考えがいろいろあり案外面白く読めました。


本書の中で良かったと思える箇所の引用です。現在でも十分通用する考え方ばかりだと思います。

前半部分『私の財産告白』の引用
  • 本多式「四分の一」貯金

貯金=通常収入X1/4+臨時収入x10/10
いうことになる。つまり月給その他月々決まった収入は四分の一を、著作収入、賞、旅費残額などの臨時分は全部を貯金に繰り込む。こうして、また次年度に新しく入ってくる貯金利子は、通常収入とみなしてさらにその四分の一だけをあとに残しておく。

財産を作ることの根幹は、やはり勤食貯蓄だ。これなしには、どんなに小さくとも、財産と名のつくほどのものはこしらえられない。さて、その貯金がある程度の額に達したら、他の有利な事業に投資するがよい。

貯金生活をつづけていく上に、一番のさわりになるものは虚楽心である。

貯金を作る生活は、まず、家計簿をつける生活から始まらねばならぬことを、とくに力説しておきたい。

何事にもつ「時節を待つ」ということだ。焦らず、怠らず、時の来るを待つということだ。投資成功にはとくにこのことが必要である。

「二割利食い、十割益半分手放し」という法で押し通した。
引き取り期限のくる前に思いがけぬ値上りがあった場合は、買値の二割益というところで、キッパリ利食い転売してしまった。それ以上は決して欲を出さない。そうして二割の益金を元に加えて銀行定期に預け直した。
次に、いったん引き取った株が、長い年月の間に二倍以上に勝貴することがある ーゆる二割利食いの法だ。
次に、いったん引き取った株が、長い年月の間に二倍以上に勝賞することがある。(略)ーそのときはまず手持ちの半分を必ず売り放つ。つまり投資の元金だけを預金に戻して確保しておく。したがって、あとに残った株は全く只ということになる。只の株ならいかに落しても損のしようはない。

好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を、時機を逸せず巧みに繰り返すよう私はおすすめする。

少し金ができてくるとだれにも必ずこの貸借のトラブルが起きてくる。こうした際、何人も心を鬼にして最初から一切融通に応じない方針を厳守するよう、私は私の体験からみなさんにおすすめする。またそれが本当にお互いのためでもある。

後半部分『私の体験社会学』の引用

対人問題のすべては、まずお互いの誠心誠意が基調にならなければならぬのはいうまでもない。
(略)
上長が部下に対し、責任はわしが負う。しかし仕事は君らに一任する。なんでも思う存分やってみたまえ、というふうに出ると、かえって彼ら自身に責任を感じ、自発的にいろいろ創意をこらすばかりでなく、大事な処は大事を取って、いちいち相談を持ちかけてくる。したがって何事にも大過はない。しかもみんなは、それを「自分の仕事」としていっそう打ち込んでかかるのだから、かえって、その官庁なり会社なりの仕事は、活気に満ち、能率も大いに上がってくるものである。
人をよく使うには、その人の性格(長所と矢点)をよく呑み込まねばならない。