強権と不安の超大国・ロシア

著者は最近テレビのウクライナ情勢等でコメントされている機会が多いと思いますが、元々はコーカサス諸国の専門家です。「強権と不安の超大国・ロシア」という表題が付けられていますが、むしろ副題の「旧ソ連諸国から見た光と影」の方が適切だと思います(出版社の思惑が強く働いたように見えますが)。

前半はコーカサス諸国や沿ドニエストル共和国など国際社会から見た非承認国家について著者のフィールドワーク、実体験に基づき書かれております。テレビ等メディアでは目にしない事実が書かれており、大変興味深かったです。
このような類の書物では一般的にロシアを一方的に悪として描かれることが多いと思いますが、筆者は比較的中立的な立場で書かれていて好感が持てました。ソ連の体制や強いロシアに好感を持っている市民が日本人が考える以上に多いと感じました。
また筆者のいろいろな危ない実体験は新書ならではの内容で大変興味深かったです。ロシアの空港でテロ容疑で拘束されたり、非承認国家で盗聴されたりしても無事だったので本当に何よりです。

後半は日本との関係について書かれています。個人的にあまり目新しい内容は少なかった印象です。
その中で筆者が以下のように述べていますが、その通りだと思いました。

国際関係を構築するうえでは、「互いを知る、共感する」が第一歩なのである