動物農場

ジョージ・オーウェルにより書かれた小説です。「1984年」読了後、こちらも有名な作品ということで購入して読んでみました。
共産主義というかスターリンによる独裁体制に対する辛辣な批判を描いた寓話です。ページ数が少ないのもありますが、非常に読みやすく、すぐに読み切りました。

スペイン内戦に参戦した頃から着想された物語らしいです。作者自身が元々社会主義者だったようですが、トロツキストが粛清される様を見て、スターリズムに対し、相当反感を覚えたようです。ただの独裁体制で、作者が理想とする社会主義体制とは遠いものでしたから。その憎しみがブタというキャラクターに現れています。

当時イギリスでスターリン独裁体制知れ渡ってなく、ソヴィエト政権に対する批判も多くなかったようです。その状況下で、世間の常識とは真逆の視点で描く物語を発行できたことはすごいなと思います。

以下、詳細なあらすじです。


主な登場人物はなんとなくモチーフが分かりました。

人間から農場を奪った直後は、みんながそれぞれの能力に応じて働いて農場を自主的に運営していました。おそらく作者も理想と思った社会主義の形だったと思います。その頃はたくさん収穫でき、みんな満足な暮らしをしているようでした。ただ当初からブタたちが、ミルクやリンゴを独占しており、それが後々影を落とします。

風車建設の議論をめぐって、スノーボールが追放されたあたりから、怪しい雰囲気になります。ブタたち支配層が労働せずに指示を出すだけになり(支配層のナポレオンはみんなの前に姿を現す機会が減っていく)、規律や過去の歴史を自分たちの都合が良いように書き換えていったのです(他の動物たちの記憶力や識字率が低いのが利用された)。そして都合が悪い歴史は全てスノーボールのせいにするという姑息さでした。
挙げ句の果てに、ナポレオンに反抗的な態度をとったものたちに粛正してしまったのです。ブタたちに対する怒りを抑えられませんでした。

その後は酷いものです。隣の人間と木材の売買交渉をしようとしたら騙されたり、重労働や過去の小競り合いで奮闘し老衰した馬(ボクサー)を解体工場に売り渡したり(しかもそのお金で自分たちだけが嗜むウイスキーを買うという鬼畜ぶり)。
最終的にはみんなが忌み嫌っていた二本足で歩くようになり、ピルキントンさんと仲良く酒宴を開くという、どうしようもない感じで終わります。ラストのシーンはヤルタ会談をモチーフにしたそうですが、作者の情報収集能力の高さに驚きます。

スターリン独裁体制の批判という要素が目立ちますが、独裁体制やそこに安易に身を委ねてしまう民衆への警鐘を鳴らしているようにも読めました。難しい本ではありませんので、是非ご一読されることをお薦めします。